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僕は君を連れてゆく

第53章 ミモザイエロー

「和、座って」

「なんか、飲む?ビールあったかな」

冷蔵庫をのぞこうしたら、腕を引っ張られ椅子に座らされた。

「こっち、見ろよ」

雅紀の声は優しくて。

雅紀を見た。

「ごめんな、迎えに来てくれたんだろ?」

「うん」

言いたいこと、聞きたいことがたくさんあるのに。

「あの人は宮崎さんって言う人で同じ会社の人。告白されたんだ。でも、きちんと断ってきたから」

俺は顔をあげた。

嘘なんてついてない。
雅紀は嘘をつくのが下手だから、今のこの顔を見れば嘘なんてついてないのは一目瞭然。

だけど、なんだか、スッキリしない。

「お似合いだった…」

「え?」

「タクシーの中で二人で雑誌読んでる姿も、さっき雨宿りしながらキスしてる姿も…お似合いだった」

「タクシー…」

「雅紀、俺たちってなんなのかな。男女で並んでるとさやっぱり恋人同士に見えるんだよ。でも、俺と雅紀が並んでると友達にしか見られない。俺たちってなんなのかな。好きなだけじゃダメなんだよ」

雅紀が好きだから、好きすぎて苦しいから
涙が出てくる。

「じゃあ、他に何がいる?」

「……他?」

「俺たちってなんなのかって和は和だろ。俺は俺だよ。俺たちの事は俺たちがわかってればそれでいいんじゃないの?俺と女の子が一緒にいたら恋人同士に見えるって?そんなこと、和が言うなよ。恋人のお前が…なんで」

「雅紀には分からないよ。だって、俺だもん。どうしたって比べちゃうんだよ。女だったら、よかったのにって!!俺がそんな風に思ってるなんて気がつかなかっただろ!」

「男とか、女とかそんなのどうでもいいだろ、俺は俺で、和は和じゃん、それだけじゃダメなの?」

「雅紀みたいに俺は思えない、俺はそんな風に思えないんだよ」

「ずっと、そう思ってたの?女だったらよかったのにって?」

「……」

「そうなんだ…」






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