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僕は君を連れてゆく

第54章 ただひとつの答え

「おいっ、」

「なんで?」

「なにが?」

「なんで、最後までシテくんないの?」

いつもこうなる。

ソファーの下で下半身を丸出しにしたまま体育座りしてる潤。

そして、怒って泣く。

俺だって、俺だって!!!

いや、ダメだ。

手なんて出したら…

「風呂入れよ」

「いくじなし」

「はぁ?」

「俺が、抱いてって言ってるんだからいいじゃん!」

キスして手コキでイカして。

それだけじゃ、足りないと言う。

俺だって、俺だって。

我慢してんだよっ!!

潤は下半身丸出しのままトボトボと風呂場へ行った。

耳と尻尾が完全に垂れ下がったまま。

手を出してない、なんて嘘言ってるのは分かっている。

だけど、最後の一線を超えないように耐えている。

だって、俺とお前は10も歳が違うんだ。

俺の耐えに耐え抜いているソレ。

「お前…よく、耐えてんな」

ピンっとはじいてやったら思いの外、よくて…

「おぅっ…」

シャワーの流れる音が響いてきたから、一人でシタ。

潤の欲に溢れる色気のある顔を思い出しながら。

ティッシュで手についた白濁を拭く。

着替えもせずにことに及んで…

これじゃぁ、耐えてるなんて言えないよなぁ。

シワシワになったスラックスを脱いだ。

クローゼットを開けたらクリーニングから戻ってきたワイシャツとスーツが。

ベッドメイキングも毎日、きちんとされている。

全て潤がやってくれてること。

気がつけば俺の生活に入り込んできてたのに。

それは当たり前になっている。

潤が転がりこんできて、いや、拾ってきて数ヶ月。

かけがえのないものになってきているのを実感してる。

でもな、潤。

30歳目前としてる俺は、臆病になってんだ。

欲しいものを欲しいって言えないんだよ。

わかってくれよ。

「翔さーん!来て!」

「なんだ?どした?」

パンツとTシャツだけになって風呂場に顔を出した。

「ねぇ、入ってきてよ」

耐えろ!俺!

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