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僕は君を連れてゆく

第54章 ただひとつの答え

そんなこんなで、潤を拾ってもうすぐ1ヶ月。


「ねぇ、翔さん、今日帰れないと思うからご飯レンチンね?」

「おぅ」

帰れない、なんて言葉を初めて聞く。

でも、なんてことないような口ぶりだし、それに俺が変な口を挟むのもどうなのかと思い、俺は朝の支度に取りかかった。

潤はいつもより早く起きたみたいだった。

「行ってらっしゃい」

「あぁ、」

鞄を渡される。

「そのネクタイが俺、一番好き」

「え?」

淡いパープルのネクタイ。

グレーのスーツに合わせることが多くて春先には優しい色合いかな?なんて思って最近、好んでつけている。

のは、建前で。

潤が転がりこんできたばかりの時に、クローゼットからみつけてきたもので。

絶対に似合う!なんて言われてつけて。

それから、つけてる。

単純だよな…俺も…

「気をつけてね」

目を合わせ頷いて部屋を後にした。



「あ。これ、お願いできる?」

ひとつ、仕事を終えてコーヒーでも飲もうと社内の休憩スペースに行った。

コーヒーを飲んで考えること。

潤のことだ。

俺は潤のこと何も知らない。

そもそも、バイトしてたけどあれからバイトに来てないし。

携帯の履歴には潤の名前だけ。

ふと、ワイシャツの袖のボタンが取れかかっているのに気がついた。

潤にやってもらおぅ…って、今日、帰ってくるの遅いんだっけ…

ってか、どこに行ってんだ?

名前。
バイト先。
家事がとても上手。
それで、俺のことが好き。

潤のこと、なんにも知らないんだけど…


まだ、熱々のコーヒーに口をつけて。

スマホを開く。

そう言えば、この間、外で飯を食った日。

一緒に写真を撮ったような…

「……俺…」

それは全て潤が撮ったもので。

どの顔も俺を見てる。

それに俺も…満更でもない顔してる…

俺、こんな顔で潤と一緒にいるのかよ…


答え…出てんじゃん…

いくじなしって言われるわけだよな…










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