僕は君を連れてゆく
第54章 ただひとつの答え
膝下まであるスカートを靡かせ俺に向かって歩いてくる。
なんだか、怖い。
後退りすると少し足を早めて近づいてくる。
「ま、松岡さん、そんなこっちに…」
「私のことは、“まさみさん”って呼びなさい」
「……」
「ここにいたい理由、本当にわからないの?」
髪をかきあげた“まさみさん”から、
フワッと香ったのは、シャンプーか。
とてもいい香り。
「まさみさんは、翔さんの会社の人事部の部長だよ」
「ぶ、ぶっ、部長っ!?!?」
俺が入ったときは…こんなデカイ女…
ん?でも、人事部と面接したとき…
「昇進したの」
「えっ?!えぇぇぇーーー!!!!」
色々と頭のなかを整理したいけど、それどころじゃない。
俺は腰を抜かしてしまったのだ。
人は驚くと、本当に腰を抜かすんだ、なんて思って。
まさみさんは俺を軽々と担ぎ医務室のベットに寝かせてくれた。
「あなた、賢いわりには考えすぎなのよ」
「…はぁ…、色んなことがありすぎて頭がパンクしそうです」
「シンプルに、真っ直ぐぶつかりなさい。自ずと答えは出てくるわ」
頷いて微笑み、医務室から出ていった。
入れ替わりで潤が走って入ってきて。
「翔さん?大丈夫?もう、本当におじさんなんだね」
「ちげぇよ!」
「はい、お水、飲める?」
俺の肩をそっと起こして、水を飲ませてくれた。
「…まさみさんのこと知らなかったんだね」
「ってか、お前こそ!何にも教えてくれねぇじゃん、今日だってここで勉強するから帰れないってことだったんだろ?それならそうと…」
「だって!!翔さん、俺のこと何も聞いてこないんだもん…」
何も?
そんなバカな。
「無理矢理、泊めてもらうことにしてもらってから俺のこと何も聞いてこないよ…だから、俺には全然興味ないんだって…」
ポトリと潤の目から泪が。
「好きだって言っても、うん、しか言ってくれないし…だから、そういう流れにもっていっちゃえって思って…それでも、抱いてくれないし…」
ズズッーと鼻をすする。
そんな風に思ってたのか…