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僕は君を連れてゆく

第54章 ただひとつの答え

「俺、一目惚れだったんだ…近づきたくて…だから、バイト辞めたくなくて」

泪がこぼれる大きな瞳。
それをふちどる長い睫毛。

なんて、綺麗なんだ…

俺は寝ていた体を起こして潤の肩をつついた。

「ん?」

「泣くなよ」

「だって…」

おいでと手招きすると泪を拭って立ち上がった。

いつもならすぐに飛び込んでくるのに、少し
ためらっているようで。

「きて。ね?お願い」

「…っふ…」

ガバッと俺を抱きしめる。

腕を背中に回して首筋に顔を寄せた。

「ふっ…んっ…」

「泣くなって」

「だって、初めて翔さんからお願いって…」

「翔さん…好き、大好きだよぉ」

「俺…家事何も出来ないよ?」

「知ってる」

「ちょっとビビりだし」

「ふっ…ちょっと?」

「臆病だし…何よりお前より10も年上だし」

「おじさんってこと?」

「こんな俺で…いいの?」

潤は俺の体をそっと引き離して俺の頬を両手で挟んだ。

「翔さんがいいの」

目を閉じて少し顎をあげた。

その赤い唇に自分の唇を重ねた。

「今日は帰ってこないのか?」

「来週、テストなんだ…だから…」

「勉強なら俺がみてやる」

「でも…」

「帰ってこいよ…一緒に帰ろう」

「…うん…」

潤はリュックを背負ってまさみさんに話してくると出ていった。

さっき、潤とキスした自分の唇に触れる。

カサついてる。

たった、数秒。

こんなにも、幸せだなんて…

「知らなかった…」

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