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僕は君を連れてゆく

第56章 アラパラッチ

そんな腐女子……いや記者に育てたのは編集長。

ちょうど私の指導してくれたのは嵐が活動休止をして数年が経った頃だった。

個々での活動になっても人気は衰えず、各社スクープを狙っていた。

ただスクープをあげる前にメンバーは先手を打って次々とマスコミに発表し、掲載されるのは後追い記事ばかり。

必死にスクープを狙っていた編集長も毎回悔しがっていたが、いつも決まって言う言葉があった。


『嵐らしいな』って……



私は嵐がどんなグループで、そしてどんなアイドルだったのか私は知らない。

だから『嵐らしい』って言葉が最初は理解できなかった。


アイドルなのに日焼けして真っ黒。

アイドルなのに再び大学へ入学。

アイドルなのにどこか情けない父親。

アイドルなのにデロデロのTシャツ。

アイドルなのにドラマでの恋人役と結婚。


それはほんの一部で……挙げたらキリがない。


こんな人たちのどこにアイドルたる所以があったのか?

アイドルというオーラーを全く感じない。


でも張り込みをしたり、突撃取材をしていると、その意味が段々とわかってきた。

それが何なのかって聞かれると言葉で説明できないけど……

その『嵐らしさ』こそが嵐を知らない私を嵐ファン、ジャニーズファンへと導いていった。


きっと編集長も同じだったと思う。

いや、元々ファンだったのかもしれないけど……


記者でさえも嵐ファンにしてしまう。

だからこそ記者はメンバーを追いかけ、記事を書き続ける。


それは嵐ファンにとっては絶望でしかない記事なのかもしれない。

反対に『嵐らしい』と思ってくれている人もいるのかもしれない。


そして何よりも……

メンバーが記事になるたび『嵐』を思い出すきっかけ、そして嵐を知らない人達が嵐を知るきっかけになっているのかもしれない。


だからそんな全てのファンのために追いかけ続ける。



全てのファンが待ち望む、最大のスクープを記事にするために……

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