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僕は君を連れてゆく

第58章 この手をのばして


雅紀さんが仕事に行くと俺は家事をする。


「さぁさぁ、天気もいいし今日はお布団干そうかなぁ」

洗濯機を回して干す。

お布団を干して掃除機をかけて。

食器を洗って。

「はぁ~、疲れた」

ソファーに座りコーヒーを飲んで。



雅紀さんの部屋は元々、すごくきれいだった。

だから、そうしてくれる誰か、がいたのかなぁ?なんて思って。


拾ってもらった次の日の朝


「あっ、起きた?」

まだ、眠気でボッーとしてる俺に向かって

「俺、仕事に行くから、はい」

俺の手を取り、手のひらに鍵を置いた。

野球ボールとバスケットボールのキーホルダーのついた鍵。

「これ…」

「うちの鍵。家出る時はきちんと閉めてね?」

「あっ…、うん…」

それは、どういう意味なの?

なんで、何も知らない俺に鍵を渡すの?

俺が悪い奴だったら、どうするの?



それから、その鍵を返して、とか言われることはなくて。

4ヶ月がたとうとしてる。



このまま、ここにいていいの?

俺、雅紀さんのこと…



鍵を渡された日、俺は家から出ることはなかった。


鍵を渡されたことが信じられなくて。


布団から出たらローテーブルにパンにハムが挟まったのがあった。

あまり綺麗とは言えない字で“朝ごはん、よかったら食べてね”と書いてあった。

ラップにくるまれたそれをジッーと見る。

毒でもはいってんのかなぁ…

めちゃくちゃ、カラシが入ってるとか…

恐る恐る口に入れた

「美味しい…」


雅紀さんの帰りを待った



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