僕は君を連れてゆく
第59章 巡る季節のなかで
双子のバッテリーはそれなりに注目を集めた。
中学校に入っても俺は野球を続けたけど、俊は一年で退部してしまった。
俺たちは体が大きくならなくて。
俺はキャッチャーからピッチャーへコンバートされた。
そうなると、元々、キャッチャーだったのもあって肩の強い俺は重い球を投げれるわけで。
それで、つまり、俺が俊のポジションを奪った。ということだ。
当時は、弱肉強食じゃないけど上手い方が試合に出れるのは当たり前!なんて思ってたから、俊が部活をやめたことを俺は“逃げた”と思っていた。
俊はそのあと、吹奏楽部に入った。
フルートを吹いてた。
女みたいでムカつく、とか、なんで野球をやらないんだってイライラしてて。
俊はそんな俺にお構い無しで。
そこらへんから、俺たちは一緒に行動することが少なくなった。
クラスが別々なのもあったし、俺も俊も朝練があったり、学校へ行く時間も部活の終わる時間もバラバラだったから。
双子だからっていつまでも一緒にいれるわけじゃないんだ。
「俊は?」
「今日は遅くなるんだって、大会が近いんだって」
「大会?」
「そうよ、来週の日曜日」
「え?そこ俺も試合って言ったよね?」
「でも、俊の吹奏楽部は初めてだから行きたいのよ、ね?ごめんね?」
別に毎試合、見に来なくてもいいのに、って思ってたのに。
日曜日は来てほしかった。
初めて試合で投げるから。
でも、言わなかった。
「別に来てなんて言ってないだろ」
年頃の反抗期ってやつだったんだろうな。