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僕は君を連れてゆく

第59章 巡る季節のなかで

反抗期を迎えても、やっぱり俺たちは双子で。

顔をあわせば、それだけで何でもわかった。



俺が自分の性癖な気がついたのは、俊のおかげ、
というべきなのか。


中2の夏に、俊に彼女が出来たんだ。

門から二人で並んで歩いて帰るのが教室から見えた。

俺まで恥ずかしいような、なんだか変な気持ちになったけど。

その時に、俺だったら…
そう考えた時に、俺のとなりにいるのは女の子じゃなかった。

いやいや、まて。

冷静になれ、そう言い聞かせて。

でも、その日から周りのカップルを見るたびに
俺のとなりにいるのは同姓の誰か、で。

友達が、「キスした」とか「親がいない週末に…」とか話してて。

それを妄想する相手も男だった。
特定の誰かはいなかったけど。
女の裸の雑誌やビデオを見てもなんとも思わなかった。




「なぁ、俊、もうキスしたの?」


「なんだよ、いきなり」


「俺、一生出来ないかも…」


「なんで?好きな子いないの?」


「よくわかんないんだ…女が好きってのが…」


「…どういう意味?」


「女と…そういう、キスとかしたいって思わない」


「…うんと…女とキスはしたくない。けど、他の誰かとはしたいってこと?」


「…わかんねぇ…」


「まだ」


「え?」


「恥ずかしながら、まだキスしてません!手だって繋いでません!」


「マジ?」


「恥ずかしいんだよ」


「…だせぇ…」


「うるさいよ!」


初めて、俺のことを話したのは俊だった。

俊がその時、キスもまだだったのか、本当のところは知らない。

悩む俺にあえて、そう言ってくれたのかもしれない。

俺の秘密は俊にしか言えなかった。

父親、母親にも。言えなかった。


だけど、俊はしゃべっちまった。

俺の秘密を。

俊にしか言えなかったのに。



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