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僕は君を連れてゆく

第59章 巡る季節のなかで

「和也…ちょっと…」

高校卒業後の進路をみんなが悩んでる頃。

三者面談がもうすぐと迫っていた雨の日。

俺は父さんに呼ばれた。

リビングのソファーに父さんが座って。

母さんは俺たちをチラチラ見ながらキッチンで洗い物をしてる。

いつもと違う、なんだか居心地の悪い空気がしてる。


「なに?」


「進路は…どうするんだ?」


「大学に行こうと思ってるけど?」


「大学に行ってどうする?」


「どうするって…まだ、なにも」

一体、何を聞きたいのか分からなかった。

「あのね、心配なのよ、」

母さんがエプロンで手を拭きながら父さんの座るソファーとテーブルの間に入ってきた。

「将来…結婚とか…」

「結婚?」

「和子、」

母さんの言葉を制止させた父さんは大きく息を吸った。

「同姓愛者は結婚なんて無理だろ」


「…なに、言ってんだよ…」


「そういう人は生きづらい世の中なの、今の日本は」


「それなりの大学に入っていい会社に就職しないと将来的に不安しかないだろ」


「和の成績は全然、悪くないんだから、もっといいところ目指した方がいいんじゃないかな?ってお母さんたち思ってるのよ」




父さんと母さんの話は右から左へと流れていった。

ドウセイアイシャハケッコンハムリダロ

そう父さんは言った。

なんで?

どうして、知ってるの?

誰にも、俊にしか話してないのに…


あぁ、そういうことか。


俊じゃん。

俊が父さんと母さんに話したってことじゃん。

アイツ…

いつも俺の味方だって言ってたくせに…


嘘つき。


嘘つき。


俺の味方なんてどこにもいない。


いつも俺たちは一緒だった。


そう思ってたのは、俺だけだったの?


誰も俺に優しくしてくれない。


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