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僕は君を連れてゆく

第59章 巡る季節のなかで

◇◇◇

「いらっしゃいませー」

お昼時の店内はいつも満席になる。
ここで働きはじめて顔馴染みのお客さんも出来て。

「和くん、運んで!」

「はい!お会計待ってね」

こうやって、雅紀さんのお母さんからも頼られるようになった。

「ラーメンセットで880円ね」

「和くん、また来るね」

「はーい!待ってまーす!」

でも、たまに迷惑なお客さんもいる。

お母さんもお父さんも厨房に入ってしまう時間が少なからずある。

そんなときにこの人はいつも…


「和くん、今度、マジでご飯行こう?ね?」

「仕事中なんで、やめてください!」

「今日は何時まで?終わったら飲みに行こうよ!」

週に1、2度やってくるおじさんでちょくちょく俺に話しかけてくるなぁ、と思っていたら明らかにナンパされるようになった。

声だけかけられるなら放っておけばいい。

店の中で二人きり、ってことはないから。

それでも、最近手を握られらたりするようになって。

「ちょっと!やめてください!」

「たまたま当たっただけだよ~!ごめんって!」

おしりとか太ももとか。エスカレートしてきてるんだ。
これで帰りに待ち伏せでもされたらどうしよう。

でも、大騒ぎして雅紀さんのお母さんやお父さんに迷惑かけるのもいやだ。

ずっと、黙っておこうって。

俺が我慢してれば済むことなんだって。



「和くん、今日お客さんひいたからもういいわよ、疲れたでしょ?」

「え?いいんですか?」

「たまには早く返ってあげて。雅紀うるさいのよ!和をコキ使ってる!とか。ね?」

「ありがとうございます」

「あっ、じゃぁこれ二人で食べな」

麻婆豆腐がタッパーにたっぷり入ってる。

「美味しそう」

「雅紀、好きだからな」

「はいっ!」

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