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僕は君を連れてゆく

第59章 巡る季節のなかで

Masaki

和くんの過去のことはずっと、気になっていた。

でも、どうやって聞いていいのか、なんて聞いていいのか、わからなくて。

俺も翔ちゃんもソッチ側の人間で。
ソッチ側の人間が集まる店に出入りしてた。

そんなときに耳に入ってきた話があった。

迷い猫がいると。
足元にそっとすり寄ってくるその猫をみんな
飼いたがってるって。

そんなフラフラするような猫を普段なら
放っておくのに。

初めて顔を見たときに気になってしまったんだ。
たまに見せる淋しそうな顔が。


かなり遊んでそうだし、俺になんかチャンスが巡ってくるはずなんてないと思ってたのに。


今、こうして隣にいてくれることが嬉しくて。

甘やかしてしまうんだ。

ねぇ、和くん。

俺のことまだまだ分かってないよ。

俺はね、心のデカさならそこら辺の男なんかに
負けないんだから。

何を聞いたって、抱き締めること出来るんだから。

和くん。

俺のこと、分かってるでしょ?

どんな和くんだって大好きなんだから。



◇◇◇

「和くん、帰ろう~」


和くんと帰りが同じ時間になれば一緒に帰ろうと
店に寄る。

母ちゃんたちの顔をもついでに見れるしね。

「あら?和くんもう帰ったわよ?お客さんひけるの早くてね。会わなかった?」

真っ直ぐ家に帰ってくれば帰り道で会うはずなのに
会わなかった。

連絡もなかった…

「そう言えば…」

母ちゃんは眉毛を下げて話し出した。

「お客さんにね…和くんにちょっかい出す人いてね…母さんたちが厨房に入っちゃった時とかを狙ってるみたいでね」

「他のお客さんもしっかり見たわけじゃないみたいなんだよ…」

そんなの聞いたことないよ…

探しに行かなきゃ!と表に出たら、
肩を抱かれた和くんがいた。

「和くん…」

「まぁ!どうしたの?」

服が汚れてて、泣いてるような顔してる。

何されたんだよ!

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