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僕は君を連れてゆく

第59章 巡る季節のなかで

Kazunari

俊から聞く話は俺の思っていたことと…
全然違った。

「母さんは…気づいてたよ、和が…その…女がダメってこと…」

「え?」

俊に、自分の性癖を打ち明ける前。
つまりは俊に彼女が出来た日。
いつもと違う俊の様子にあざとく気づいた母さんは俊に聞いたらしい。
「彼女でも出来た?」と。
俊は、俊で正直だから、「なんでわかるの?」と聞いたそうだ。
「どっちが告白したの?」とか、「どんな子なの?」、「今度、つれてきてよ!」とか母さんは言った。
「和には言うなよ」って俊が言ったら、母さんは頷いたそうだ。
「和もいつか、恋人、連れてきて欲しいなぁ」って。
そのときは気がつかなかったらしいが、
あとから俺の話を聞いて、
母さんが“彼女”ではなくて、“恋人”と言った理由が分かったと。

俺が家族と距離を取るようになって。
父さんも母さんも悩んでたみたいだ。
恋人を作らない俺の学校での様子を
俊に毎日のように聞いてたんだって。

「俺から聞いた和の話を父さんに話してたみたい」

知らなかった。

俺のことなんて、興味ないと思ってたから。

「和は俺が喋ったと思ったんだろ…
ちゃんと、違うって言えば良かったんだよね。
ごめんな」

そうだよ!って怒鳴ってやりたくなったけど、
きっとあの時の俺は、俊の話なんてきちんと聞かなかったと思う。

「案外、近くにいたんだな」

俊の目は真っ赤で。
泣かせた。

俺のが兄貴なのに。

「一度、顔見せに帰ってこいよ…父さんと母さんも会いたがってる…」

そう言って、
また、
泣いた。

俺のが兄貴だから、泣かせたらダメだって思ってたのに。
俊を泣かせるやつは許さないって思ってたのに。

俺が泣かしてるじゃん…

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