僕は君を連れてゆく
第59章 巡る季節のなかで
雅紀さんの部屋に帰ってきた。
帰る途中、雅紀さんはほとんど喋らなかった。
でも、ずっと、手だけは握ってくれてた。
部屋に入ってからも何もしゃべらない。
その空気が耐えられなくて。
「雅紀さ…ん…俺…」
ふんわりと抱き締められた。
「無事でよかった…俺、和に何かあったら…そう思ってすごく怖かった」
いつもなら、ギュッウと強く強く抱き締められるのに。
「泣いてるの?」
「だって!!和はわかってない!俺にとって和がどれだけ大切な存在か 」
胸が痛い。
すごく、痛い。
雅紀さんを悲しませてしまった。
「和…今までたくさん、悲しいことがあったかもしれない。でもね、和の周りの人も悲しい気持ちになってたってこと忘れちゃダメだよ」
涙で雅紀さんの顔が見えない。
俺はこれまで、悲しくて泣いてた。
と、思っていたけど…
自分が可哀想で、悲しくて。
俺が嫌で寂しくて。
誰かのために泣いたりなんてしたことなかった。
でも、雅紀さんは初めから俺のために…
今だって…
「なんで?なんで雅紀さんが泣くの?」
きっと、
「和が好きだから…愛してるからだよ…」
やっぱり…
「雅紀さんだって、泣き虫じゃん!」
「和だって…」
頬を伝う涙を拭うこの優しい手。
「雅紀さん、週末、行ってくる…」
「うん、行ってこい」
俺には雅紀さんがついてる。
だから、大丈夫。