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僕は君を連れてゆく

第60章 名前のない僕ら―隠した恋心編―


変なのは、弟くんも同じだった。

これは…
ハジメテは失敗したのか?

それとも…他のナニか、があったのか…

うーん…

よくわかんないや…

ニノへのこの気持ちは本人に打ち明けるつもりはないけれど、でも…

俺は地元の大学へ入るつもりでいて。

そこまで、勉強する必要はない。

ただ、今の成績をキープするのが大前提だけど。

うちの学校は卒業生が毎年、この受験シーズンになると放課後に勉強会を開いてくれる、という伝統がある。

お金がなくて塾に行けない生徒のために始まったらしいが誰でも参加できるため、俺はこれに参加してる。

終わればまっすぐ家に帰る日もあるけど。

最近は、ニノの塾が終わる頃を見計らって待ち伏せしてる。

あ、出てきた。

携帯に視線を落としてる背中は、真ん丸で。

やっぱり、何か変。

ファミレスで一緒にご飯を食べて、家に誘った。

俺の気持ちなんて、知らないから当たり前なんだけど。

少しは周りを疑った方がいい。

ウサギの仮面を被った、狼がいるんだから。

「あれ?誰もいないの?」

「みんな、出掛けてるよ!夏は忙しいみたい」

「へぇ…」

二階の俺の部屋でゲームをして。

携帯を何度も見てたり、時計を気にしたり…

分かりやすい…

「なんかあるの?」

「え?」

「スマホばっか、見てんじゃん」

「別に見てねぇし」

「そう?何かあったの?最近、変だよ?」

「別に…あ、いや、いいや」

「なに?気になるじゃん!」

「いや、たいした意味はないよ?」

「うん!」

「たいした意味はないけど…雅紀は、雅紀はさ、
好きな人いる?」

頬を染めて、上目遣いで。

「…えっ…」

体育座りして、そんなこと聞いて。

「いや!何でもない!忘れて」

そんな顔をさせるのが、あの弟くんだなんて。

狼になっちゃうよ?

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