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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=

【和也の夢】


「兄さんさ、少し髪切った方がいいんじゃないの?」

「まだいいよ…」

「顔が全然、見えないんだもん」

「いいよ、これで」

潤が俺の膝に頭をのせて寝転がったと思ったら
おもろに髪の毛に手を伸ばしてきて。

「ってか、膝枕って…」

「重い?」

「重くはないけどさ…」

「恥ずかしい?」

こういうことをなんで普通に聞いてくるかね。

多分、今、俺、顔真っ赤だな。

「昔さ、母さんに膝枕されてる兄さんが羨ましくて、変われってよく言ってたよね」

「あぁ、そんなことあったね」

「父さんがしてやる!って言ってきて父さんの膝に寝たらすね毛がモジャモジャで気持ち悪って!」

「父さん、めっちゃ悲しい顔してたぞ」

「あの頃は悪気はなかったんだよなぁ」

「まぁ、そうか。でも、俺、変わってやったよね?」

「そう、俺が泣くとすぐ兄さんは変わってくれたり、譲ってくれたりしてさ」

「兄さんだからね」

「今は?」

「ん?」

膝枕されてる潤の頭を撫でながら、潤の話を聞いていた。

「今は?俺たちって?」

「今?」

スクっと起き上がって正座して俺に問いかける。

背が伸びて、色んな部活に顔を出すようになった潤は体つきもどんどん逞しくなっていって。

「…なーんてっ!言わなくても分かってるから」

そおっと、ゆっくり俺を胸に抱き寄せた。

トクン


トクン


と聞こえる潤の心臓の音。

トクン トクン トクン


「あ…」


俺を抱き寄せた潤の顔を見たくて、頭を持ち上げた。

「あんま、見んなよっ」

と、鼻の頭を人差し指で掻いた。





という夢を見た。




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