僕は君を連れてゆく
第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=
なかなか、寝付けないくせに朝もすぐに目が
覚めてしまう。
今日くらいはもっと寝かせてくれても良かったのに。
「…夢…」
なんで、こんな夢を見たのか、わからない。
いや、夢なんだからこれくらいいいよな。
もっと、夢を見ていたい。
夢の中にいたい。
夢の中でしか。
雅紀の目の前で泣いてしまった。
しかも、そのまま寝るという…恥態を…
起きたら雅紀も寝てて。
ベットを占領して悪かったなぁ…って。
携帯に雅紀からメッセージが届いてた。
「プッ…」
雅紀から好意を寄せられてるなんて全然気づかなかった。
ずっと、友達だと思ってた。
でも、雅紀は…
雅紀を好きになれたら…
なんて、俺は最低なことを考えようとした。
いつも、俺のそばにいてくれた。
泣いたあの日もただ黙って俺の背中を撫でてくれた。
誰かに打ち明けることなんてないと思っていたこの気持ち。
雅紀じゃなきゃ、気がつかなかったと思う。
こんなに、俺を見てくれてたなんて。
そんなに、俺、分かりやすいのかな?
ってか、そんなに周りが見えてないのかな?
自分は比較的、冷静な人間だと思っていたけど
そうじゃなかったんだなぁ。
「兄弟とか、男同士とか、全部とっぱらって考えてみなよ」
「あの弟くんならどんなニノでも受け止めてくれると思うよ」
雅紀の言葉だ。
「笑ってるニノがいい」と。
「難しいんだよ、バーカ」
雅紀のメッセージに返事をして起きた。
俺は受験生だから勉強しないと。
まぁ、今の成績ならよっぽどじゃない限り大丈夫だと思うけど。
でも、ここを離れると決めたから。
きちんと、合格しないと。
「大学のこと、弟くんにきちんと話した方がいい」
雅紀にはそう言われた。
何から、どうやって話せばいいのか。
「話せないよ…」