僕は君を連れてゆく
第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=
〈潤の手と和の手〉
あれから、兄さんとご飯時に顔を合わすけど
何も変わらない。
学校から帰ってきても真っ直ぐ部屋に入って勉強してるみたいだし。
塾のある日は帰りが遅いからスレ違いだ。
だんだん、寒くなってきてブレザーを着るようになった。
家を出るときに兄さんの靴がまだ玄関にあって
?って思ったけど、もう自由登校なのかも、とか
もしかしたら、違う靴を履いてるのかも、とか思ってそのままうちを出た。
いつも通りでつまんない学校生活。
それでも、通っていたのは兄さんがいたからかも、なんて思うようになった。
天気予報で毎日、乾燥に注意!とお天気お姉さんたちが口うるさく言うようになって。
「潤の手って綺麗だよね」
「そう?」
俺の向かいの席の女子がハンドクリームを俺の手に塗り始めた。
男子たちも混じって、如何わしいマッサージ店の真似なんかしながら、そいつは言った。
「潤のお兄さんも手を綺麗にしてるよね」
「え?」
「この間、図書室で会ったんだけど…」
俺は走った。
兄さんの教室に。
「あの!すいません!」
教室のドアから声をかけたら、中にいた生徒たちが一斉に俺を見た。
そうだろう。
みんな受験生でピリピリしてるのに。
「どうしたの?」
声をかけてきたのは、相葉センパイだった。
「兄さんは?」
「…なんか用?」
「話したくて…、どこにいますか?」
「来てないよ」
「…来てない?」
「風邪ひいたみたいでさ、休むって…最近、ずっとしんどそうだったけど…知らないの?」
俺と同じくらいの身長だけど、ずいぶんと上から見下ろされてるような、そんな気分になった。
弟のくせに、何も知らないんだな、
そう言われてるみたいで。
「…っわかりました、」
戻ろうとかかとを返したら、腕を掴まれた。
あれから、兄さんとご飯時に顔を合わすけど
何も変わらない。
学校から帰ってきても真っ直ぐ部屋に入って勉強してるみたいだし。
塾のある日は帰りが遅いからスレ違いだ。
だんだん、寒くなってきてブレザーを着るようになった。
家を出るときに兄さんの靴がまだ玄関にあって
?って思ったけど、もう自由登校なのかも、とか
もしかしたら、違う靴を履いてるのかも、とか思ってそのままうちを出た。
いつも通りでつまんない学校生活。
それでも、通っていたのは兄さんがいたからかも、なんて思うようになった。
天気予報で毎日、乾燥に注意!とお天気お姉さんたちが口うるさく言うようになって。
「潤の手って綺麗だよね」
「そう?」
俺の向かいの席の女子がハンドクリームを俺の手に塗り始めた。
男子たちも混じって、如何わしいマッサージ店の真似なんかしながら、そいつは言った。
「潤のお兄さんも手を綺麗にしてるよね」
「え?」
「この間、図書室で会ったんだけど…」
俺は走った。
兄さんの教室に。
「あの!すいません!」
教室のドアから声をかけたら、中にいた生徒たちが一斉に俺を見た。
そうだろう。
みんな受験生でピリピリしてるのに。
「どうしたの?」
声をかけてきたのは、相葉センパイだった。
「兄さんは?」
「…なんか用?」
「話したくて…、どこにいますか?」
「来てないよ」
「…来てない?」
「風邪ひいたみたいでさ、休むって…最近、ずっとしんどそうだったけど…知らないの?」
俺と同じくらいの身長だけど、ずいぶんと上から見下ろされてるような、そんな気分になった。
弟のくせに、何も知らないんだな、
そう言われてるみたいで。
「…っわかりました、」
戻ろうとかかとを返したら、腕を掴まれた。