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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=

うつらうつらと夢の世界をいったりきたりしてて。

遠くから楽しげな笑い声が聞こえてきた。

寝てばかりいて体も硬くなっているから起きることにした。

リビングのドアを開けたら、父さんも母さんも
潤もみんなが俺を優しい笑顔で見た。

この空間が俺たちの場所だ。

俺たちがずっと、守ってかなきゃならない場所だ。

父さんが買ってきてくれたプリンを潤と並んで食べた。

甘くて、甘すぎるプリン。

「兄さん…、ここついてる」

潤が俺の口元にティッシュを寄越してきて。

受け取ろうとしたら、口元にそっと当ててきた。

恋人にするみたいに。


「っ!!!」


「あ、ごめん…」


「こうしてるとどっちがお兄ちゃんかわかんないわね」


「んなことないでしょうよ」


赤くなってるだろう顔を隠したくてプリンをかきこんだ。

そうしたら、案の定、噎せてしまい。

潤が背中を擦ってくれた。


「麦茶飲みなさい」


母さんも父さんも笑ってる。

一人でずっと苦しいって思ってたけど。

俺も笑ってた。


「和也は薬飲みなさいよ」


薬の箱を俺の前に置いた。

潤が父さんとソファーに移動してテレビを見ながら話してる。

父さんと変わらなくなった身長。

どんなに頑張ったって、もう俺は潤の背を追い越すこと出来ないんだなぁ。

「潤の手は母さん似だなぁ」

父さんが潤の手首を握って話してる。

そんな声がしたから俺も自分の手を眺めて見た。

長くない指。

ころんとした手のひら。

うん。

父さん似だなぁ。うん。

「和也はお父さんに似てるのね」

母さんが言った。

母さんは父さんと潤を見てて。
俺もそちらに視線を移したら潤と視線が交わった。

トクン

トクン

と早まる胸の動きにざわつきとは違うものが流れ込んできた。

「兄さんの手は丸っこいんだよな」

潤…

俺は…


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