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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=

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「はぁ?休むしっ!」


「なんで?」


兄さんの試験が終わり、今日は合格発表の日。


俺は兄さんがまた向こうに行くもんだと思っていて、どこのホテルに泊まるのか聞いて押し掛けてやろうと思ってた。


そうしたら、
「ネットで見れるから」と。

そんなでいいんですか?合格発表!
と、俺はズッコケた。(実際には転んでないよ)

しまいには俺に、学校に行け、と言った。

そんな大事な日に授業なんて受けてられるか!と言ったけど、父さんも母さんも当たり前のように仕事で。


これで、兄さんが不合格だったらどうすんだよ。


まぁ、そんな心配がないからそう言えるんだろうけど。


文句言ってやりたいけど3対1の構図はどう見ても俺の負けで。


「てかさ、兄さんも学校に行くならそう言ってくれればいいのに」

二人で電車を待つホームに並ぶ。


「こうやって学校に行くのもあと少しじゃん?」


「え?」


「え?卒業したらさ、出来ないじゃん…」


紺のダッフルコートに白いマフラーを巻く兄さん
頬を赤くして口許をそれに隠した。

「兄さん、頬っぺたまっか」


「寒いからだよ!もう!」


ホームに電車が入ってきた。


たくさん乗る人の波にのって隅っこを陣取る。

真冬の電車はこの人混みなのに暖房がとても効いていて暑いくらい。

マフラーを外す兄さんの額にうっすらと汗が。

エロい。

あれから、兄さんの受験勉強の追い込みもあってシテない。

ヤろうと思えば出来た。


だけど、もし断られたら…と思うと怖くて手を出せない。


このおでこにキスしたい。

首筋、耳、その体全部に。


「ニノ~!!」


また、来た。



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