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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=

「なんですか、相葉センパイ!」


あまりにもあから様に不機嫌になる潤に
思わず笑ってしまう。

「何、笑ってんの?」


「なんでもない!」


雅紀にはあのあと、きちんとお礼をした。

雅紀は「良かったね」と微笑んでくれた。

自由登校となった今、雅紀は部活に顔を出したり
用もないのに中居先生のところに入り浸ってるみたい。

雅紀曰く、友情が芽生えたんだって。
先生と生徒で友情って意味がわかんないんだけど。

「何時だっけ?」

腕時計を見て雅紀が言う。


「10時。まぁ、大丈夫だと思うけど…やっぱり緊張するね」


「ニノなら大丈夫っしょ!」


そう言われて頷く。

それまで黙ってる潤を見つめると潤はニコっと笑った。

車両の隅っこにいる俺たちの手元なんて誰も見てない。

潤の手が俺の指に触れる。

チラリと潤を見るとスマホを弄ってて。

ドキドキさせれてる。

キュッと握られる手。

ソワソワするけど、嬉しいって気持ちの方がずっと大きい。

こうやって一緒に並んで歩くのもあと少し。

雅紀は同じ部活の奴等と話出してて。

これ以上一緒にいたら色々恥ずかしいところを見られるかも…って思ったからこれでいいや。

鞄からいつものイヤホンを取り出して耳にさした。

潤が俺の肩をトントンと叩いてきたから首を傾げた。

「なに、聞いてるの?」

聞く?と片方のイヤホンを渡す。


潤はそれを耳にさした。


流れる音楽は受験勉強の時に聞いていたクラシックだ。

「え?マジ?」


「これ聞いてるとはかどるんだよ」


「へぇ…よく、相葉センパイと聞いてたのは何?」


「雅紀と?なんで?」


「いや…なんつーか…いいや!いいよ!これで」


どういう意味だ?

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