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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=


「おめでとう!」


10時ピッタリに合否を確認した俺は職員室に行って中居先生に合格したことを伝えた。


「ありがとうございます」


「弟にさもう少し勉強に力入れるように言ってくれ」


「潤ですか?ヤバいですか?」


「いや、お前を追いかけるんだろ?ならもう少し力入れにいとな」


「追いかける?」


「違うのか?ブラコン?なんて、言うんだっけな」


自分の顔がサァーと赤くなるのが分かる。


「そこは分かりませんが…勉強するように言っておきます」


「硬いな、兄貴は」


中居先生は親しみやすいけど、つい余計なことを話してしまいそうになるからなるべくたくさん話をしないように俺はしてる。


職員室には花が散った奴も、咲いた奴もいて。

先生たちはどちらに対しても涙を流して一緒に悲しんだり、喜んだりしてる。

職員室を出て潤のクラスに向かう。

トイレの前で潤の授業が終わるのを待つ。

あと五分くらいか…

音楽を聞こうかとイヤホンを手に取った。

でも、朝の電車で潤と手を繋いだことを思い出して。

なんだか、恥ずかしくてやめた。


「あっ!潤のお兄さん!」


と、潤のクラスメイトに囲まれた。

前にも同じようなことがあった。

あの時は、そこにいることが嫌で、逃げだしたかった。

「兄さんっ!どうだった?」


俺は顔の横でOKって手で作ってみせた。


「おめでとう!兄さん!」


って、潤が笑って抱き締められた。


「おいっ!ちょっとっ!」


引き剥がそうとしたけど、潤の友達にも囲まれて祝われて。


「胴上げする?」


「しないよ!やめろ!」


「照れてる~!やっぱり、可愛い~」

年上に向かって、全く!

潤の目が潤んでる。

「本当におめでとう!兄さん…」



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