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僕は君を連れてゆく

第61章 名前のない僕ら =僕らの幸せ編=

なんで、潤を迎えに行こうと思ったかわからない。

でも、気がついたら足が勝手に駅の方へ歩いてくんだ。

いつもならたくさん話しかけてくる潤が黙ってる。

それは、きっと、緊張してるから。

俺と同じ。

さっきから肩がぶつかって歩きづらい。

だけど、ぶつかる度に潤が俺を見るから。

潤が「大丈夫」って。
「俺に任せて」って言ってるような、そんな気がするから。

玄関を開けて中に入ると家の中は思ったよりも暖かくて。

「お腹空いたろ?すぐ作るよ」


「てか、買い物してこなかったね…」


「忘れてた」


「潤…」


なんて言えばいいのか。
ご飯なんてあとでいい。
今すぐに…


ボフッと潤が俺を抱き締める。


「兄さん…そんな顔しないで…我慢出来ないよ…」


「どんな顔してる?俺、どんな顔してる?」


「俺のことすげぇ、好きって顔してる…」


そう言ってくれるのがたまらなく嬉しくて。


「潤…」


キスしたい…
そう口にしようとしたけど、それは叶わなかった。


「兄さんっ…」

潤が俺の唇を塞ぎ、唾液を交換するように舌を絡める。


漏れる声もこぼれる吐息も。


全部、全部、俺だけのもの。


「兄さんの部屋、行きたい」


「いいよ、もう、ここで」


「だめだよ、ちゃんとしたいんだ…無理矢理じゃなくて、ちゃんと…」


こういうところが弟らしい。
そんなこと言ったら機嫌悪くなっちゃうから言わないけど。


手を繋いで部屋に入ると潤が俺の机をじっと見つめてる。


大学の資料がそこにはあって。


「兄さんと離れるなんて俺、出来るのかな…」


俺はベッドに座り両手を広げた。


「きて」


俺に抱きついてきた潤からは爽やかな香りがして。


「大丈夫だよ、離れても」


「なんでそう思うの?大学で兄さんモテるかもしれない」



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