僕は君を連れてゆく
第62章 夢の向こう側 MN
「寝不足ですか?」
メイクさんが俺の肌を見て言う。
「うーん、そんな感じ…」
「少し厚めに塗っておきますね」
「お願い」
もう、何も聞くな、という無言のメッセージを送るつもりで目を閉じた。
思い返してみれば、そうだ。
かずが映画を撮りに海外へ行ったときも。
俺の肌は荒れまくった。
かずと一緒に住むことにして部屋を探すのも大変で。
あの時も俺の肌の調子は最悪だった。
「はい!OKです。少し休みますか?横になれるとこ手配しますか?」
「いや、大丈夫。ありがと。翔くん呼んでくる」
楽屋に入ると翔くんは新聞を読んでいた。
「お待たせ」
声をかけたら微笑んで新聞を持ってメイクに向かった。
楽屋には俺とパイプ椅子をベットにして寝てるリーダーしかいなくて。
「なんかなぁ…」
つい、ため息と一緒に言葉が漏れてしまって。
リーダーに悪いなと思ったけどもう出てしまった言葉は仕方ない。
「なんだろなぁ…」
「…それ、話かけてる?」
「あ、起こした?」
「…なんだよ、もうちっと寝れたのに」
「ごめん、ごめん!」
「で?なに?」
「なにって?」
「なにが、なんかなぁ~で、なにが、なんだろなぁ~なの?」
「全部!もう全部!空回ってんだよ」
「いつもじゃん」
リーダーはそれだけ言うとまた横になってしまった。
いつもって。
なんだよ、いつもって。
「どうすっかなぁ~」
ガチャとドアが開いて相葉くんとかずが入ってきた。
二人は収録の前に雑誌の取材をしていたんだ。
「「お疲れぃ!」」
かずは真っ直ぐリーダーのところへ行ってしまう。
いつものこと。
いつものこと。