テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第62章 夢の向こう側 MN

「あっ…」

「なに?」


冷凍庫を覗いてるかずの後ろから一緒に覗き込む。

「空っぽ…」


「アイスもない…」


「あ…それはごめん、この間食べた」


「え?」


「今度、買ってくるから!ね?」


「なんかいつもそれでごまかされてる気がする」


つまんでビールでも空ければお腹も満たされる
だろう。

テーブルに並べてビールを2本。

「「いただきます」」


二人でこうやって食べるのは久しぶりだ。

ビールもすすんで他愛ない話をしてた頃にかずがしゃべりだした。


「今日はどうしたの?あんなLINEしてきて」


「会いたい、って思ったから」


「ここに帰ってくれば会ってるでしょ?」


「俺、一緒に暮らすようになってさ幸せの一番上まできたって」

箸を置いて姿勢を正した。


「指輪を受け取ってくれてこれ以上はないって思ったんだ」


かずは黙ったまま俺を見つめる。


「仕事もそう。どんどん欲が出る。もっとみんなとやりたいことがあるって。だから俺もって。俺、もっと我が儘になるわ」


「わがまま?」


「かずが足りないよ。なんでこうしてくれないんだろう?とか毎日、思ってて…でもさ、俺が思うってことはかずも思ってんだろうなぁって」


「全然、わかんないんだけど…」


「うん…もっと、俺を好きになって。夢じゃないよ、これからも俺たちはもっと、もっと恋してくんだ」


「恋をするの…?」


「そうだよ、俺はもっと、もっと、かずを好きになりたい」


「なにそれ…」


「誓うよ」


遠慮は気遣いとは違う。
遠慮は距離を作ってしまうからだ。

「誓うって…」


「もっと俺たち愛し合える」


かずは耳を真っ赤にさせて俺を見てる。


「指輪、しようよ」


ケースに入れたまま眺めることの方が断然多い、リング。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ