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僕は君を連れてゆく

第62章 夢の向こう側 MN


かずは、「連れてって」と言った。

夢のような時間へ、ってことだろう?

眠るその顔はデビュー前と変わらなくて。

あの頃を思い出すと胸がジリジリする。

仲間というよりは、ライバル?
いや、勝手に敵、合わない相手と決めつけてた。

まさか、同じグループになってこんな関係になるなんて。


「かず、許してくれる?」

かずが優しく微笑んだようで…
素敵な夢を見てたらいいなぁ。

かずの隣に潜り込んで足を絡めて目を閉じた。



「…うん…」


いない…
隣に誰もいない…

ようやく目を開けたらかずはもういなかった。

「起こしてくれたっていいじゃん…」


「あ?起きた?」


寝室のドアがあいてかずの顔が見えた。

「…うん、起きた」


「朝飯、食う?」

いつものようにヘアーバンドでおでこ全開のかず。

「作ったの?」


信じられない。

こんなこと、今まで一度もなかった。

「味はわかんないから!」


「頂きます!」


手を合わせて卵巻きに手を伸ばす。


「甘くない」


「うちのは甘くなかったの」


「へぇ~」


「なに、その気の抜けた返事は」


「いや、まだ知らないことあるんだなぁと思って」


「確かに…」


二人で言葉もなく食事をすすめる。

「ねぇ」

「うん?」

「なんかないの?」

「なんか?」

「不味いなら、不味いって言ってもらっていいんだけど!」

「え?うまいよ、普通に」

「……」


耳が赤い。


「なによ」

「なにが?」

「なんで見てんだよ」

「美味しいよ」

「わかったって」

「また、作ってよ」

「う…」

「クククっ」

笑うのも許してもらいたい。
もう、かずが可愛くて、可愛くて仕方がない。


「笑うな!」

「うん…クククっ」

「もう!片付けは潤がやってよね!」

「はーい!」






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