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僕は君を連れてゆく

第1章 背中

《背中7》

唐突すぎたか…

すぐ逸らされた視線に少しショックをうけた。

でも、同じ。俺の熱と二宮の熱。


授業中にも関わらず俺は二宮のことを考えていた。
大きな集団がグラウンドを回っている。

「ラスト一周っ!腕を振れ~」

ふと、教室へ目をやった。二宮だ。

(あいつ…授業聞いてねぇな…)
(俺を見てる…よな?)

「もう一周行こうか~」
ストップウォッチと記録用紙を置き、先頭集団に混じり走る。

何か体を動かしていないと…
俺は浮かれている。

体を動かしてアピールだ。
俺を見ろ!

昼休み。

俺のクラスのやつらが前から歩いてくる。
 
手越、小山、松本、二宮…

松本が声をかけてきた。
二宮は俺と松本を交互に見て笑う。
時々、手で口を覆い笑う。

何か言いたげに視線を時々よこすくせに視線を交えようとするとすぐ反らす。

交わらない視線がとてももどかしくて…

この学年だけじゃない。どの生徒も俺のことをきちんと“相葉先生”と呼ぶのは少ない。
気がついたら“相葉ちゃん”と呼ばれていて…
最初は教師の威厳がっ!なんて思ったけど生徒との距離はぐっと近くなった。

口を手で覆い笑っている二宮。

目があった。


「二宮。飯終わったら付き合えよ~」

他の生徒は教師からの呼び出しだと二宮を慰めるものもいればからかうやつもいる。

「えっ?何すんの?ってか、何で俺だけ?」

「さっき、物理の授業真面目に聞いてなかっただろ?」

二宮に近づいて
「俺のこと見てただろ?」

俺を上目づかいで見る二宮。その顔…

「飯終わったら、体育準備室なっ!」

来るかな…

伝えたい。

来てほしい。

二宮…

来るだろ?
だって、こんなにも背中が熱いんだから。

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