僕は君を連れてゆく
第65章 ハートビート
「俺、ファイル探してくるから潤は漫画でも見てて」
駅の中はそれなり人で溢れていた。
中でも本屋は時間も潰せるだろうから混んでいた。
俺の買い物なんてつまらないだろうと思い潤に声をかけた。
「あ…うん。そうだね」
一階に本屋、二階に文具が並んでるから俺は二階へ上がった。
潤の言った通り、かなり品揃えで。
「これは迷うな…」
端から端まで見てるんじゃキリがなさそうだ。
今まで使っていたのより、ポケットが多くついてるものを選んだ。
会計に向かおうとしたら高い位置にあるクリアケースを取ろうと手を伸ばしてる女性が目に入った。
「取りましょうか?」
「あ、いいんですか?」
手を伸ばして、それに触れる。
「この色?」
「いえ、黒を」
「こっちか」
手に取り女性へ手渡す。
「どうぞ」
「ありがとうございます。助かりました」
「いえ。これ、使いやすいですよね」
「使ってますか?」
「リピーターです」
同じものを使ってる人に出会い、少し会話が弾んだ。
「でわ、失礼します」
頭を下げてレジへ進んだ。
潤に連絡しようか迷ったが、そのまま降りて潤を探そうと思った。
エスカレーターを降りて漫画コーナーへ行く。
「こっちも広いな…」
漫画コーナーにはいなくて、小説のコーナーにいた。
誰かと話してるみたいで。
同級生だろうか?
男女数人と一緒にいるところだった。
話してる内容までは分からないけれど。
手を叩いて笑ったり。
口を大きく開けて笑う姿は等身大の潤の姿なんだろう。
可愛い…すごく。
でも、同時に少し寂しく感じる。
俺にはこんな風に笑ってくれてない。
自分をさらけ出してもらってない。
と、潤が俺に気がついてこっちに来た。
「買えた?」
「待たせてごめん」
「ううん、大丈夫!」
友だち?
聞いてもいいかな?
「俺も雑誌買っちゃった」
「そっか…今、話してたの友だち?」
「うん。そう」