僕は君を連れてゆく
第65章 ハートビート
「よかったの?」
「うん?」
「友達…盛り上がってたみたいじゃん?」
「まぁ、久しぶりだったし…いつまでもガキみたいでさ…」
「そっか…」
どうしても。
トゲのある話し方になってしまう。
そいつらと遊んだ方が、楽しいんじゃないの?
「このあとどうする?なんか食べる?」
潤がいつもみたいに笑ってくれて。
「ここどうかな?」
潤がスマホを操作しながら俺に近寄る。
肩が触れて二人で小さい画面を覗き込んで。
長い睫毛が影を作るその横顔。
「潤…」
「ん?」
俺を見たその瞳に写る俺の顔。
そして、俺を写す潤の顔。
「なんか、自信ねぇよ」
「え?」
駅の中の本屋の入り口のそばで。
こんなこと言うつもりなんてないのに。
「そんな綺麗な顔で」
「…」
たくさんの人が俺たちの周りを通過していく。
自分で言ってて情けない。
「これから、たくさんの出会いがあってさ。きっと、素敵な人とたくさん出会うのに…俺が隣にいていいの?」
「え?」
「だって、潤さ気づいてないだろ?いつまでも俺のこと“さん”づけで呼んでくるし。敬語も抜けないしさ。あんな風に笑ってくれない」
「あんな風?」
「さっきの友達と一階にいたときみたいにさ…」
「笑ってほしいの?俺に?」
「俺にだけ見せてない顔があるんじゃないのかな?って思っちゃうんだよっ。俺にだけ全部見せてくれって」