僕は君を連れてゆく
第65章 ハートビート
ダメだ。
言っちゃダメだ。
そう思うのに。
次から次へとよくまぁ、口が動くなぁと思うくらいに
思いの丈を話してしまった。
潤は不思議そうな顔をして俺を見てる。
何を言ってるんだ?あなたは?という顔で。
なんなら、そんなこと言う人だったの、あなたは?
という顔にも見える。
気まづくて潤の顔が見れない。
今日こそは、そう、思ってたのに。
「翔さん…」
「ん?」
「お腹すいた」
「え?」
「お腹すいたから、なんか食べよう!」
潤が俺の後ろに回りそっと背中を押した。
「え?おぃ!え?」
「行こ!行こ!」
潤がみつけれてくれたお店は昔ながらの喫茶店で。
潤はナポリタンとメロンソーダを。
俺はオムライスとコーヒーを注文した。
「翔さん…」
「うん?」
「俺さ、さっきすごく嬉しかった。でも嫌なとこも見ちゃった」
少し顔が赤く見えるのは店の中が暖かいせいだろうか?
「本当は一緒にファイル選びたかった。一人だけ二階にあがってく翔さんに着いていきたかった」
「メロンソーダです」
「あ、僕です」
「コーヒーになります」
「あ、それは俺です」
「わがままって言われるかな?って。子供っぽいって思われるかもしれないって思って言えなかった」
肩を落として話す潤はメロンソーダのささるストローをつまんでチューっと吸った。
「ナポリタンです」
手をあげた潤の前にナポリタンが。
俺の前にオムライスが運ばれた。
「ひとまず、食べよっか」
潤はニコっと笑ってフォークで器用にナポリタンを巻いて食べ始めた。
「翔さんも食べたい?」
頷いたら
「あ~ん」
「え?」
「ほら、食べてよ」
店の中が暖かいだけじゃない。
「あ~ん」
俺は口を開けた。
「どう?美味しい?」
「うん」
味なんかわかんない。
でも、とっても、とってもうまいじゃんっ!!!