僕は君を連れてゆく
第67章 瞬きの合間に
「結婚って祝福されてするもんだと思ってたけどこの世界にいたらそういうわけにいかないんだね」
潤は言う。
「そういう俺もおめでとう、って言えてないけど」と。
改めて潤と二人で会った。
「俺はまだここでやりたいことがたくさんある」
潤はこの世界で生きるために生まれてきた人だから。
「翔くんはこれからどうしたいの?」
俺が司会をさせてもらっていた音楽番組は俺が結婚を発表してから視聴率は下がる一方で。
打ちきり説が流れてるけど…
やんわりだけどやめてほしいみたいなことを言われている。
正直、ボロボロだ。
祝ってもらいたいなんて思ってなかった。
そもそも、愛で始まった結婚じゃないんだから。
だけど、雅紀、智、ニノのグループの解散が決まっていてみんなで温かく送り出そうとしているのに水を差した、とSNSで叩かれまくって、潤の足を引っ張っていると攻撃されて。
俺は傷だらけだ。
「俺がいても迷惑だよな…」
彼女と住むことになった家は彼女の事務所が決めたマンションで。
毎日、カメラマンが張っていてエレベーターに乗るまでマネージャーと一緒に行動しなきゃならない。
彼女は芸能活動を休止して実家に帰っていて俺一人。
それでも、苦しかった。
今、この世界で俺の味方になってくれる人は誰もいない。
「はぁ…」
眠れないからお酒を飲んで寝たら顔が浮腫んでしまい…
荒れた新婚生活と週刊誌に書かれて…
全然関係ないのに全部がそれと結び付くように見られてしまう。
一人しかいない部屋で大きなため息をついた。
携帯が鳴った。
しばらくしたら、止まった。
見ると彼女の名前があった。
かけ直すべきか…
するとまた携帯が鳴った。
雅紀の名前だった。
あと10秒鳴ったらでよう…
「…きれた…えっ!?」
すぐにまた着信がある。
それはやっぱり雅紀からで。
「…っ…もしもし?」
『あっ!翔ちゃん?』