僕は君を連れてゆく
第67章 瞬きの合間に
「雅紀…」
『久しぶりだね…』
「うん…」
『結婚、おめでとう』
「え?」
『びっくりしたよ。急に結婚で、しかもパパになるんだね?翔ちゃんがパパなんて想像つかないけど…』
と、雅紀は笑った。
いつもと同じ声で。
「…っ…まさきっ…俺…」
『ん?』
「ありがとう」
『うん。いいんだよ、翔ちゃん。幸せにしてあげてね』
こいつは本当に優しいんだ。
こんな俺に。
電話越しで俺は泣いた。
雅紀はずっと泣く俺にいつものように話しかけてくれて。
ラストコンサートのリハでの失敗談。
智とニノとご飯を食べに行った話。
実家の昔飼っていたペットの話。
「雅紀、俺、やめるわ」
*****
すごいステージだった。
雅紀の、ニノの、智の、三人の歴史がそこに詰まっていた。
涙を流しながらステージを見つめる俺に、潤はオロオロしながら水のペットボトルを渡してくれたり、はたまたツアーのグッズだったタオルで顔を拭いてくれた。
「じゃぁ、ここでスペシャルゲスト!!二人もいい?」
「いいよー」
「みんなでやろっ!!!」
「俺の大好きな人!翔ちゃんと松潤でーす!!」
突然のスポットライトが俺と潤を浮かび上がらせた。
「え?無理、無理」
「なに、言ってんの?行かなきゃ!」
潤が俺の手をひいてステージまで連れてく。
俺がステージになんてあがったら、台無しになってしまう。
ダメなんだよ。
と思っていたら。
俺たちにたくさんの声援が飛んでくる。
デビュー前に五人で歌って踊っていた楽曲を三曲やった。
潤はこうやってステージに呼ばれるかも、と思っていたらしく練習してて。
踊れないのは俺だけだった。
右回転なのに左に回ってみたり、しゃがむところで俺だけ立っていたり…
散々だった。
「松潤!翔ちゃん!ありがとう!!!」
三人が俺たちに頭を下げて。
ニノと智は少し泣いて少し泣いてるようだった。
握手して抱き合った。
「翔ちゃん、俺の初恋だったよ」