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僕は君を連れてゆく

第70章 向日葵のやくそく /MS

sho



午後の外来が始まっても、ずっと時計が気になって仕方なかった。

「じゃぁ、お薬だしておきますね」

「先生、ばいばーい!」

「またね」

手を振る子供と頭を下げる母親が診察室を出ていった。
よし、これで終わりだ。
病棟で患者を診て必要な指示をだしてくれば帰れる。

必要なことを伝えて病院を出た。

潤は帰ってきてくれるだろうか。



誰もいない部屋。
いつもだって、帰りが揃うことなんてほぼないのに、こんなに見える景色、感じる空気が違うのかと思う。

俺は基本、否定はしない。
なんにでも。
受け入れる、とはちょっと違うけれど。
潤と恋愛関係になるときもそうだ。

潤はまさか男の俺を好きになるなんて思わなかったそうだ。
だけど、認めたら即行動に移せるところが救命医っぽいなぁなんて思っていた。

俺は、素敵な人だと思ってた。
行動力もあって、何より、決断力があって。
男らしいとは、この人のことを言うんだなぁと思ったくらいだ。
それは別に自分が女っぽいとかそういうわけではなくて。
髭だって、脛毛だって生えてるし。
体もそれなりに鍛えてるし。
猛アタックをされて流されるように、ではなくて、
きちんと自分の意思で潤と恋人になったのだ。

それから、医師同士、高めあいながら、
愛を育ててきたと思う。

ダイニングの椅子に座っていて、気がついたら
一時間たっていた。

「風呂でも入るか…」

お風呂にお湯をはりにいく。

パジャマとバスタオル、下着を準備して。

ふと、帰ってくる気がした。

玄関に吸い寄せられるように歩いて、玄関を開けた。

そうしたら、潤がいた。












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