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僕は君を連れてゆく

第70章 向日葵のやくそく /MS

jun



「上がるわ」

「お疲れ様です」

まだまだ残暑が厳しい夜だ。
院内は涼しいけれど、処置やオペが始まれば汗をかくばかり。

汗を拭いながら歩いて数分、俺たちのマンションについた。


病院から徒歩圏内で20階以上。
ベランダで縄跳びが出来る広さ。
お風呂にはジャグジーがついてて玄関は広め。
互いの部屋に寝室。
これが俺たちが部屋を決める条件だった。

男同士で一緒に住む、というのはなかなか難しい。
ルームシェアという形をとることで納得させた。
それに、互いに医師であるということは大きかった。

互いの部屋があるけど多くの時間を過ごすのは寝室だった。
ベッドを選びに行くのも恥ずかしがって…
脚が短くてキングサイズ、スプリングのうるさくないもの。
こう言うとアレだな…今思えば、恥ずかしいことを言ってたのかも。

玄関に鍵を、と思ったら玄関があいた。

「おっ、おかえりなさい」

「ただいま」

「お風呂、入る?」

「一緒に?」

「え?」

「冗談だよ」

玄関から覗いた顔は優しいいつもの翔だった。

椅子に座ると、氷を入れたグラスにアイスコーヒーを注いで出してくれた。

「潤、今日はごめん」

「俺こそ…」

「明日にならなきゃあの子、大介くんどうか確認しなきゃならないけど…あの時じゃないって思ったんだ」

「うん」

「緊急を要することだったと分かってる。だからこそきちんと家族の母親の気持ちを確かめたかったんだ」

翔は一つ、一つゆっくりと話した。

「あの場面で家族と一緒にいなかったら、オペをしてたと俺も思うんだ」

「あのあと藍沢先生の患者を診に行ったんだけど…オペをするような状況なんだけど、患者の状態はまだオペじゃなかった」

「まだ?」

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