僕は君を連れてゆく
第72章 可愛いの秘密
「えー!すごーい!頑張ったね!」
と、俺の両手を握った。
これは潤の癖だ。
高校にあがってから俺たちは部活には入らず互いにバイトを始めた。
俺はコンビニ。
潤はファミレス。
俺は中学の最後の大会の前に肩を壊した。
先発ピッチャーを任されていた俺とその相方、潤。
二人でバッテリーを組んでいつもいいところまでいくんだ。
最後の大会は予選を勝ち上がって決勝に進むことが目標だった。
だから、練習した。
そうしたら、それが仇となり肩を壊した。
潤は泣いてくれた。
俺以外の球を受ける気はない、とも言ってくれた。
泣いて悔しがる俺の両手を握りしめて、潤も泣いたんだ。
俺が投げれなくなって控えの二年生のピッチャーは
頑張ってくれたけど決勝にあがることは出来なかった。
自分を責めて一人部屋で泣いてる俺の様子を見にきて
潤は言った。
「三年間、よく頑張ったね」と。
顔をあげたら優しい顔をした潤がいて。
俺の頭を撫でた。
そして、両手を握りしめて
「和くんがいたから俺も頑張れた」と。
それから、俺を褒める時
一緒に喜びを分かち合いたい時
だいたい両手を握りしめてくれる。
「何食いたい?」
「えー、何がいいかなぁ」
カレーのスプーンを口に咥えたまま悩む。
「なんでもいいよ、明日までに考えておいてよ」
「超、高いやつにしよ~」
そんなことをいいながらきっと、ラーメンとか牛丼とか言うに決まってる。
そんなところが可愛くて、可愛くて仕方ないんだ。