僕は君を連れてゆく
第72章 可愛いの秘密
それから、二人でいるとき必ずキスをしてる。
「和くん、いい?」
俺が答える前にキスされる。
リビングのソファーの上で
玄関を閉めて壁に体をおさえつけられて
キッチンの冷蔵庫の脇で
俺の部屋で
潤の部屋で。
「その先ってセックスってこと?」
ゲホっ、ゲホっ
「もう、大丈夫?」
俺にハンカチを渡し背中をさすりながらも
視線は翔くんに釘付け。
「そう。二人きりに家にいるってのがそもそも無理なんだよ、必ず親いるし」
「なるほどね」
なるほど、じゃねーよ。
なんで、みんなそんな普通に聞いてんだよ。
「キスだけじゃ我慢出来ないよね」
と、潤が俺を見て言う。
俺は、その視線に耐えられなくて目をそらして。
ヤりてー、なんて翔くんが叫んでみんな笑ってる。
俺は、気が気じゃなくて。
だって、潤が机の下で俺の右手に左手を重ねてきたから。
離れようとしたら、指をなぞってくるから。
潤を睨んだ。
潤は、なに?どうしたの?って
いつもの可愛い顔で聞いた。
潤も、キスだけじゃ我慢出来ないってこと?
俺は…
俺は…
っていうか、俺たちそういうことなの?
もうずっと、考えてた。
男同士でも付き合うってことが普通なら、
俺たちは?って。
男同士で付き合うときは告白とかないもんなの?
何も言われてないんだけど、俺。
キスばっかり。
キスしかしてこない。
好きって言われない。
あー、もう!
これじゃぁ、キスじゃないことしたいみたいじゃん。
好きって言ってもらいたいみたいじゃん。
お昼休みが終わりそれぞれ教室に戻ろうと立ち上がる。
「俺、トイレ寄るわ」
トイレに入ったら潤があとをついてきた。
「和くん…」
「ん?」
チュッ
「また、あとでね」
本令が鳴ったのになかなかトイレから出れなかった。