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僕は君を連れてゆく

第72章 可愛いの秘密


「ちょっと遅くなったな」

携帯で時間を確認したらいつもより15分位遅い。
次のバイトの人が遅刻してきたから帰れなかったんだ。
潤にメールしたが返事はない。
俺が夕飯の当番だから。

駆け足で帰る。

潤が待ってる。
おかえりー、っていつもみたく部屋中に響く声で
俺を迎えてくれる。


マンションの前まで来たら見慣れた影が。

潤と女の子がいた。

声をかければいいのに。

声をかけられない。

足が動かないんだ。

何か話してるようだけどこっちから潤の顔は見えなくて。

会話の内容も分からない。

そうしたら、女の子が潤に抱きついた。

身体中が冷えていくのを感じた。

あんなに動かない足はすんなり動いて。

二人の横を通り過ぎる。

潤は俺に気づいて、目を見開いた。

俺は…
どんな顔してるんだろう。

エレベーターに乗った。
ドアが閉まろうとしたら潤が入ってきた。

走ってきたんだろう、息があがってる。

「なんで、先に行くの」


「邪魔しちゃ悪いと思って」


「別に邪魔なんて思わないよ」


「やるなら家でやれよ。潤の家、誰もいないんだし。都合いいじゃん。あ、それともすんだ後?見送りってやつか。優しいとこあんだね、さすがだわ」


「本気で言ってるの?」


潤の低い声。
怒ってるみたい。
なんで、お前が怒るんだよ。

「飯は?どうする?二人で何か食ったんだろ?そういうのは一言、連絡しろよ」

俺は、
俺は、
潤の特別じゃなかったんだ。



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