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僕は君を連れてゆく

第73章 胸騒ぎの夜

それでも、永遠に血液を確保できる。

決してうまくない血をわざわざ買って飲むこともなくなるし。

一年に一度の10月31日の夜に血眼になって人間を漁らなくてすむわけだ。


「相手はどんな子なの?」


「年上でめちゃくちゃ真面目なんだよね。でもちょっと抜けてるところもあって」


「惚れてんだ」


「わかる?」


俺は大きく頷いた。
相手を想いながら話していたんだろう。
潤の顔は優しさに満ちていた。

「じゃぁ、行くわ」


「健闘を祈る」

握手して別れた。

潤の背中を見つめていたらなんかいい匂いがしてくる。

この日は世の中はハロウィンであちこちでイベントを開催している。

出店なんかもでてるところもあるみたいだからその匂いなのか。

俺たち吸血鬼は鼻が利く。

鼻がピクピクと動くのが分かる。

香水とか食べ物とかの匂いとは違う。

初めて感じる匂い。

口のなかが潤ってくるのがわかる。

涎がでてきてる。

匂いのする方へ歩みをすすめる。

「こっちだな」

どんどん繁華街から離れていく。

裏道に差し掛かった、その匂いは一段と濃くなる。

「旨そうだ…」

普段は隠してる牙が出たくて、出たくてウズウズして
歯茎がムズムズしてくる。

俺は唇を舐める。

ビルの前にくると地下に繋がる階段がある。

そこからその匂いが放たれている。

「ここだ…」


階段を降りていくとドアがあり中から音楽が聞こえてくる。
いわゆる、クラブってやつで。

こんなとこに…
いるのか?

本能がこたえてくる。

いる、って。

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