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僕は君を連れてゆく

第73章 胸騒ぎの夜

白くて柔らかそうな首筋を舐めた。


「あんっ…」

「くっ!」

牙を当てた。

「あっーーーーーー!!!!!」

そこに噛み付く。
牙を埋め込むように。

ゴク
ゴク
ゴク

「あっ、あっ、」

あと、もう少しだけ、と思ったら目の前の男の力が抜けたのが分かった。

やりすぎた。

真っ白になった男は薄く、細く息を吐いてる。

「やべぇ…死んじまう」

そのまま、人間を担いで店から出た。

タクシーをつかまえて乗り込んで自分の家に運んだ。

にしても、軽い。

女じゃなくて、男なのに。

そして、うまい。

もっと、もっと欲しくてたまらないけど、
このまま、飲んだらこいつが死ぬ。

そうなっては困る。

松潤、俺も見つけた。

契約
出来るかな?

首筋に残る二ヶ所の赤い痕。

虫刺されのようなその痕。

そこをそっと撫でる。

「んっ…」

「起きたか?」

そう聞くと俺の唇をなぞってくる。

「ない」

「ん?」

「牙…」

「あぁ…」

「吸血鬼さん?」

体を起こそうとするので力を貸してやる。

「大丈夫か?」

一度、ギュッと目をつぶって、ゆっくりと俺を見た。

吸い込まれそうな瞳。

少しだけ腫れた口角が痛々しい。

そこに手を伸ばし触れる。

「痛むか?」

首を横に振る。

「もう一度…」

「ん?」

「もう一度してください」

胸騒ぎがする。

「キスしてください」

そのまま覆い被さって唇を重ねた。




俺は見つけた。
最高の人間の血液を。

血液がうまいと、唾液だってうまくて。

永遠に唇を重ねていられる。

この、人間の体液があれば俺は生きていける。

そう感じる。

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