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喫茶くろねこ

第16章 「らしさ」って何だろう?

「若いのに、元気ないとか、覇気がないとか、そういうのを見て『若者らしさが無い』って、若いんだからもっと元気出せだのシャキッとしろだの、そうじゃないんだよな。若くて、経験が少ないと、今自分の目の前にぶら下がってる問題が実際以上に大きく見えたりとかして悩んじゃったりするだろ、そうすると若くても元気なんか出なかったりする。若くて体力さえありゃ元気ってもんでもないからな。元気、ってのは『気』って字が入るだろ。かえっていろんな経験していろいろ学んで乗り越えてきた年寄りのほうがさ、自分はそれを乗り越えてきたっていう自負とかあって、自分なら大丈夫だってわかるっていうか、大局が見えてたりするから、年寄りのほうが元気があったりする。気持ちの問題が大きいからな。元気か、元気じゃないかってのは。まぁ、だからって年寄りは全員元気ってわけでもない。やっぱり若いころに比べればそれなりに身体にガタもくるからさ、そういうところから若いころには無かった不安要素とか抱えたりもするしな」

「らしさ、なんてものに縛られないほうがいいと私は思うわ」

いつからそこにいたのか、気付くと中井さんが隣に座っていた。

「な、中井さん…」

「人からの押し付けの『らしさ』に縛られるんじゃなくて、自分の心に正直に生きて、これが『自分らしさです』って言っとけばいいのよ」

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