喫茶くろねこ
第5章 下地家
こたつの布団をはぐって中を覗くと、我が家のアイドル、マロンがいた。毛の色が栗色だからマロン。名づけはうちの母親。
「ま~ろんっ♪」
取り出して抱き上げる。が、今は抱かれる気分じゃなかったらしく、腕を引っ掻いて逃げていった。
「あぁ~、まろ~ん…」
「当たり前だろう。せっかく良い気持ちで眠っていたのに無理やり引っ張りだして抱き上げれば逃げるさ」
「そっ…その声!マスター?!」
「マスター?何言ってんだ、バカかお前?」
丸めた新聞で頭をはたかれる。3つ年上の兄貴だった。
マスターの声と兄貴の声があまりにもそっくりで、思わず錯乱してしまった。
…この兄は、一浪した上に県外の大学に通う僕とは違い、現役で地元の公立大学に合格し、4年間自宅から通学。このたび、無事に地元の信用金庫への就職が決まり、春からは新社会人となる孝行息子だ。
いや、僕だって、一人暮らしの自分の生活費を自分で何とかすることにしたんだ。こんなところで兄と自分を比べて卑屈になるのは止めよう。
「あ、いや…。今日はちょっと疲れたから、もう寝る」
「佑太、ご飯は?」
「帰りの新幹線ん中で、弁当食べた」
僕はリビングから逃げるように自分の部屋へと上がった。
今日は…いろんなことが…あったなぁ…。
「ま~ろんっ♪」
取り出して抱き上げる。が、今は抱かれる気分じゃなかったらしく、腕を引っ掻いて逃げていった。
「あぁ~、まろ~ん…」
「当たり前だろう。せっかく良い気持ちで眠っていたのに無理やり引っ張りだして抱き上げれば逃げるさ」
「そっ…その声!マスター?!」
「マスター?何言ってんだ、バカかお前?」
丸めた新聞で頭をはたかれる。3つ年上の兄貴だった。
マスターの声と兄貴の声があまりにもそっくりで、思わず錯乱してしまった。
…この兄は、一浪した上に県外の大学に通う僕とは違い、現役で地元の公立大学に合格し、4年間自宅から通学。このたび、無事に地元の信用金庫への就職が決まり、春からは新社会人となる孝行息子だ。
いや、僕だって、一人暮らしの自分の生活費を自分で何とかすることにしたんだ。こんなところで兄と自分を比べて卑屈になるのは止めよう。
「あ、いや…。今日はちょっと疲れたから、もう寝る」
「佑太、ご飯は?」
「帰りの新幹線ん中で、弁当食べた」
僕はリビングから逃げるように自分の部屋へと上がった。
今日は…いろんなことが…あったなぁ…。