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喫茶くろねこ

第5章 下地家

必死で昨日の記憶をたどっていると、何かが落ちたような、ゴトッという鈍い音が自分の部屋から響いた。多分、ケータイだ。

2階に上がって自分の部屋へ入ると、昨日、机の上に置いたはずのケータイが床にあった。恐らく、バイブの振動で落ちたのだろう。
拾い上げてケータイを開き、画面を確認する。

どうでもいいが、僕はガラケー派だ。兄貴や母親は普通にスマホを使っているが、僕は機械音痴なのでなんとなくスマホが怖いのだ。僕がまだ小学生だったころ、初めて持たされたのがシンプルなキッズケータイだった。両親が共働きだった為、緊急時の親との連絡用に持たされた、と僕は思っていたが、親がちょっと目を離した隙にフラフラといなくなる子供だったため、GPS機能で僕の行方を追うのが目的だった、というのはわりと大きくなってから知った。
ともかく、人生で初めて持たされたケータイがキッズケータイだったため、普通のケータイにはあまり抵抗がないが、スマホはどうも苦手なのだ。スマホを使いこなす母親には「若いくせに年寄臭いわね」と笑われるが、仕方ない。

ケータイには知らない番号からの着信があった。ただし、市外局番というか、上3桁には見覚えがあった。春から通う大学と、上3桁の番号が同じなのだ。ということは…

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