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喫茶くろねこ

第5章 下地家

着信履歴からの折り返しで電話をかける。

Prrr...Prrrr...P

呼び出し音を聞きながら、待っていると

「お電話ありがとうございます、喫茶くろねこでございます」

やっぱり!でも、知らない声…女性だ。

「あっ、ああ…あのっ、えっと…」

予想通りの名乗りを、予想外の声でされて、ちょっとうろたえてしまい、どもる。

「あ、もしかしてあなた、下地佑太さん?」

「はっ、はい!あの、どうして僕の名前…」

「靴。あなた、昨日、靴を忘れて帰ったでしょう。靴の入った紙袋があって、中に一緒に靴屋のポイントカードがあったから、電話番号と名前がわかったのよ。それで掛けてみたの」

「あの~…失礼ですが、あなたは?」

「あら、ごめんなさい。私、喫茶くろねこの山路と申します。…先代マスターの娘で、現マスターに通帳名義を貸したり、協力してる人間って言った方がいいかしら?」

「あ~…。あの、靴のこと、連絡して下さって、ありがとうございます。ちょっと今すぐには取りに行けないんで、保管しといてもらってもいいですか?」

「大丈夫よ。春からうちで住み込みで働く子でしょ?2階の玄関に置いておこうか」

「あ、お願いします。助かります。あっ、それと、マスターって、電話…話せますか?」

「マスター?ちょっと待ってね」

ゴソゴソと電話の向こうで何か音がする…

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