テキストサイズ

喫茶くろねこ

第5章 下地家

くろねこマスターとの不毛な会話を終えた僕は、マスター代理の山路さんと、借りる部屋のことやアルバイトの手続きに関する簡単な話をして、電話を切った。

近いうちに契約書類を郵送で送ってくれるそうだ。
マスター、マスター、って偉そうに威張ってるけど、やっぱりそーゆーところは、猫には出来ないよなぁ…。

『お前、やっぱりケンカ売ってんな?!』

うぉっ!マスター!?
もしかして、今のつぶやき…聞いてた?
…っていうか遠隔でテレパシーを使うにしても遠隔過ぎだろ!一体何キロ離れてると思ってんだ?新幹線使って移動に4時間かかる距離だぞ!

『…多分、切ったつもりなんだろうが、まだ切れてないぞ?電話。さすがに何の媒介も無しにこの距離の遠隔テレパシーは無理だよ』

えっ…?

慌てて手元を見ると、ケータイはまだ通話中のままだった。
ぅわー、恥ず!何やってんだよ、もう…。

いささか情けない気分になりながら、今度こそ確実に携帯を切った。ついでに電源も落として、充電器に繋いで、それからヨレヨレになったスーツを脱いで、部屋着(兼、寝間着)として愛用している、いつものジャージに着替えた。

はぁ~、ラクちん♪ やっぱ落ち着くわ~。

昨日一日、着慣れないスーツを着ていたせいで、なんとなく全身が凝り固まっていたような感じがしていたが、愛用のジャージのこれ以上無いフィット感に、身も心も解放された気分だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ