喫茶くろねこ
第6章 春 ~母と猫と入学式~
希望を聞いておいて、それを却下するなら、最初から希望なんて聞かなければいいのに…。
母のそういうところ、ちょっと嫌いだ…。
「予算が決まっているの。余ったら、余ったお金で足りないと思うもの、必要だと思うもの、自分で考えて買い足しなさい」
そういうと母は、僕にお金の入った封筒を渡してきた。
「父さんももうすぐ定年だからね。そしたら無職になっちゃうでしょ。大学の学費だけはなんとしてでも出してあげる、でもね、あんまり金銭的にゆとりはないの。正直、県外の大学に決まった時は学費プラス仕送りなんて、どうしようかと思ったわ。だからあんたが、家賃無料の住み込みのアルバイトを見つけてきてくれた時は、ほんとに助かったと思った」
「母さん…」
「しんみりしないの!大丈夫よ、普通に暮らす分には蓄えもあるし、退職金だって出るし、あと何年かすれば年金もあるしね。父さんはもう定年だけど、母さんはまだ若いから働こうと思えば働けるし!」
…父さんと母さんは12歳違いで干支が一緒の、年の差夫婦だ。でも、若いって言ったって、20代30代のような絶対的な若さは無い、あくまでも“父さんと比べたら”という相対的な若さだ…。
母のそういうところ、ちょっと嫌いだ…。
「予算が決まっているの。余ったら、余ったお金で足りないと思うもの、必要だと思うもの、自分で考えて買い足しなさい」
そういうと母は、僕にお金の入った封筒を渡してきた。
「父さんももうすぐ定年だからね。そしたら無職になっちゃうでしょ。大学の学費だけはなんとしてでも出してあげる、でもね、あんまり金銭的にゆとりはないの。正直、県外の大学に決まった時は学費プラス仕送りなんて、どうしようかと思ったわ。だからあんたが、家賃無料の住み込みのアルバイトを見つけてきてくれた時は、ほんとに助かったと思った」
「母さん…」
「しんみりしないの!大丈夫よ、普通に暮らす分には蓄えもあるし、退職金だって出るし、あと何年かすれば年金もあるしね。父さんはもう定年だけど、母さんはまだ若いから働こうと思えば働けるし!」
…父さんと母さんは12歳違いで干支が一緒の、年の差夫婦だ。でも、若いって言ったって、20代30代のような絶対的な若さは無い、あくまでも“父さんと比べたら”という相対的な若さだ…。