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喫茶くろねこ

第6章 春 ~母と猫と入学式~

それから、僕と母さんは部屋を出て、ホームセンターや百均の店などを回った。ネットで探してプリントアウトしてきた地図を片手にバスで回る…つもりだったが、なんと自称発明家の佐々木さんが、親切にも車を出してくれるという。

発明家の車と聞いて、妙なギミックのついた怪しい車じゃないよな、と警戒したが、特に怪しげなところはなく、いたって普通のミニバンだったので安心した。

運転席に佐々木さん、助手席に僕、後部座席に母さん。そして何故か母さんの膝の上にマスター。

…マスター、いいんですか?店にいなくても

『なんで定休日なのに店にこもってなきゃならんのだ』

えっ?今日って、定休日だったんですか?

『うむ。あ、いや、定休日ではないが、臨時休業だ』

定休日じゃないじゃないっすか!

『いいんだ。猫の店だから気まぐれに休むのだ』

「ええー。気まぐれって…」

途中までテレパシーで会話をしていたが、思わず声がでてしまった。

「ブッハハハ…」
「ん??何々、どしたの佑太?」

噴き出して笑う佐々木さん。
何が起きたのかわからないと言った感じで不思議そうな母。

『ご母堂には、最後のお前の呟きしか聞こえていないと思うが、佐々木には、私の声だけはずっと聞こえているからな…』

あー、…。隣で人が電話してるときに、電話の向こうの人間の声は聞こえないけど、隣の人の喋ってる言葉からなんとなく会話の内容が分かる、みたいな感じ?

『うむ、そんなところだ。ま、お前のご母堂ならテレパシーの話をしても大丈夫だと思うぞ?多分、信じるだろう』

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