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喫茶くろねこ

第9章 夏 ~恋の季節と、占いと~

白猫の斜め後ろに胡坐をかいて座る。

マスター、この子、名前は?

『前の飼い主にはサクラって呼ばれてたらしい。でも、その名前はもうイヤだそうだから、お前が何かつけてやれ』

えっ、そそ、そんな……、マジで?

「白猫ちゃん、こっちおいで~。新しい名前考えるからお顔見せて?」

精いっぱいの『猫なで声』で呼びかけるも、白猫ちゃん無反応。寂しい。マスターはなんか笑ってる?!酷いな、マスター。こっちは一生懸命やってるのに。

『気持ち悪いから普通にやれ。猫なで声は嫌いだ』

なっ…別にマスターに話しかけたわけじゃ…

『この子、が!嫌いなんだ。そういうのがな、ま、いろいろあるのさ』

えっ…

「ごめんよ、猫ちゃん。何も知らなくて…」

言いながら手を伸ばす。ゆっくりと何回か頭を撫でる。ちょっとビクッとしたようにも見えたが、おずおずとこちらを向いてくれた。

……オッドアイだった。澄み切った空のようなブルーの瞳と、強さを感じさせるゴールドの瞳。

「ほー…」

あまりの美しさにため息しか出なかった。宝石みたいな瞳だと思った。特にブルーの瞳が母親の好きなアクアマリンのようだと思った。

「……マリン」

僕の中でこの子の名前が決まった。とは言え…

「…マスター、名前、マリンでいいかな?」

『私に聞くな、本人に聞け』

「どう?」

白猫の顔を覗き込む。目を細めて喉を鳴らす白猫ちゃん。

OKって意味かな?

『お前の部屋で飼え。マリンは今日からお前の相棒だ。あと今日はもう帰っていいぞ。仕事は上がりだ』

「マリン、帰ろうか」
「なぁ~~ん」




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