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喫茶くろねこ

第10章 佐々木邸訪問

「僕、そんなに自信なさそうに見えます?」

「見える」
「見えます」
『見える』

佐々木さん、ニコルス、マスターの意見が揃った。
確かに、自分の中に「これだけは負けない」って言えるものもないし、3人の見立ては正しいんだろうと思う。

「僕、どうしたらいいですかね?」

「どうもしなくていいぞ。なるようにしかならん」と、佐々木さん

「人生、楽しんだもの勝ちです!ユータも一緒にESS…」
「それはヤダ」

ニコルスの誘いは即断る。なんでこいつはこんなに僕をESSに入れたがるんだ。

『好きなことを大事にして、あとは、気楽に生きりゃいいさ。お前、何が好きなんだ』

「猫、かな。猫が好きです!」
『猫の私に向かって、猫が好き、とは愛の告白かな?』
「マスター…、ご自分のこと、普通の猫だと思ってるんですか?」
『思ってる』

「「「絶対に普通じゃない」」」

僕と、佐々木さんと、ニコルスの声が揃った。

『こんな猫らしい猫を掴まえて、お前ら失礼だな』

そう言うと、マスターは前肢を目一杯前に伸ばして“伸び”をした。
指と指の間が広がって、普段は隠れている鋭い爪がにゅん、と出ている。
続いて、くはぁ~、と大きなアクビをする。鋭い歯とザラザラした舌が見えた。

うん、容姿と仕草は、めっちゃ猫。でも、やっぱり、人の言葉喋る時点で十分普通じゃないよな。
マスターの“猫らしさ”アピールを見ながら、そんなことを考えていた。多分、佐々木さんとニコルスも同意見だろう。

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