委員長はエッチでした
第6章 天使の笑顔
体育館倉庫を出て
涙が止まらなくて
中庭の方に行く。
黒崎と
やっと結ばれて
幸せだったのに……
どうして
こんなに悲しいの?
なんで黒崎は
あんなに辛そうに
あたしを見るの?
どうして謝るの?
頭の中が
ごちゃごちゃして
考えが纏まらない。
中庭の木の下にある
ベンチに座る。
木の葉が
下まで下がってて
これなら
あたしの姿を
隠してくれると思って
そこにしたんだ。
誰にも会いたくはなかった。
暫くそうして過ごして
いつの間にか
隣のベンチに
啓介が座っていることに
気付いた。
……会いたくなかった。
さっき
あんな場面を
見てしまったから。
だから
啓介がいることには
気付いたけど
何も言えなくて
啓介も黙って座っているだけだった。
いい天気だった。
グレー色の
切ない秋の空。
遠くの空で
うっすらと
月が浮かんでいるのが見えた。
三日月なのか
なんなのか
形が良く見えなくて
目を凝らした。
ふと啓介を見ると
同じように
空を眺めて
あたしと同じものを見てるんだと
気付いた。
少しだけ
心が軽くなる。
「なんで一人で泣いてんだよ、黒崎は?」
「……知らない」
啓介の言葉に
突き放したような言い方になる。
眉をひそめて
あたしの顔を見る啓介。
「黒崎と喧嘩でもしたのか?」
「……っ」
喧嘩でもないけど
なんなんだろう?
自分でも分からない。
「━━━━さっき、見てただろう、
あれでいい雰囲気にならなかったか?」
「……っ」
気付いていたんだ?
あれだけ
まともにじっと見たら
そりゃ気付くよね?
「ドアくらい閉めなさいよ、そういうプレイ?」
「あいつの趣味、ああいうのが燃えるんだよ?」
「昼休みにいつもあんなことしてんだ?」
「あそこの倉庫、二つとも鍵が壊れてるからな?
お前こそ、良かっただろ?」
「……なんのこと?」
ぐっと言葉に詰まる。
ドアはちゃんと
閉めていた。
隣の声が聞こえた
ってことは……
あたし達の声も
聞こえて……?
「……良くなんかないよ、
あたしはあんな形でなんて……っ」
嫌じゃなかった
場所なんて
どこでも良かった。