委員長はエッチでした
第10章 上書き
黒崎 亮side
昨日の帰り道の事だった。
たぶん
ずっと気には
なっていたけど
会いたくない
その存在。
会いたくなんか
なかった。
その人に
会ってしまった。
彩香さんと
別れた後
若干の不安な
彩香さんの台詞を
聞いても
俺の心はまだ
幸せだった。
ひたひたひた
背後から
近付く気配。
彩香さんの
お母さんからの
ラインの連絡が入った。
『結城が彩香の住む、家の近くを
うろついてるから、注意して』
俺はすぐに
振り返り
彩香さんの家の方角に
少し戻る。
そこで
あの人に会ったんだ。
結城さん。
ピシリとした
高そうなスーツ
芸能人のような
お洒落な髪型
明るい色。
微かに香る香水
僅かな煙草の匂い。
随分派手な外見に
なったなと思う。
それが
やけに
恐ろしくて
圧倒的な存在感に
足がすくんだ。
「こんなとこで、君に会うなんてね?
君のせいで、俺は彩香を、失ったと
いうのに、
君は随分、幸せそうだね?」
夜なのに
僅かな外灯の
灯りが照らす
結城さんの
顔は
ゾクリとする程の美形
鋭い瞳が
俺を睨んでいた。
「あなたは…、
こんなとこでなにを…っ、
もう、彩香さんに、近付かないで下さい…っ」
精一杯
彼に圧倒されないように
踏ん張って
負けないように
睨み返した。
余裕の微笑みで
小馬鹿にした視線に
見下されてしまう。
「別に今から仕事に行くだけだけど?
彩香に近付いてもないのに、
どうしたって言うんだい?
まるで彩香が近くに、
いるような口振りだね?」
流し目で
チラリと彩香さんの家を見ている。
まさか
この家に入るのが
バレた訳じゃ…
いや
引っ掛かるな
かまかけてるだけだ。
俺は黙って
慎重に結城さんを見る。
彩香さんの
家の方を
見てはいけない。
ふいに
靴の音を響かせて
結城さんが
俺に近付く
高そうな靴。
「君こそ高校生がこんな時間に、
何をしてたのかな?
真面目な優等生が、不純異性行為とか?
……彩香ともう、寝たのか?」